彼女と再会した私は週末、一人旅に出た。

行き先は東京。

思い立ったら、まるでタンポポのわた帽子のように、一人でふらりと旅へ出向く彼女。

そんな彼女に、私はいつの頃からか憧れを抱くようになった。

ひるがえって私はというと。

近場でおこなわれる自転車のイベントへ、タマに出かける程度だった。

今回は、いつも気ままに出かける彼女を真似てみたのだ。

久しぶりの一人旅。

とは言っても、前日に夜行バスに乗り込み。

翌朝の7時に東京駅に着いたら、その日の夕方にトンボ帰りというタイトな内容。

復路は、成田空港からの格安飛行機で、滞在時間7時間の強行スケジュールだった。

その日の夜。

いよいよバスへ乗り込むという時に、私は高速バスの中から彼女にLINEをした。

今から出かけるということと、ちょっとシリアスなメッセージを添えて。

それは 二週間ほど逢わずにいよう、という内容だった。

彼女の壮絶な半生。

私への彼女の裏切り。

そして別れ。

一ヶ月後の 彼女との突然の再会、そしてプロポーズ。

あまりにも展開が急すぎて、頭がついて行かなくて。

私は、一人でゆっくり自分と向かい合う時間が欲しかった。

センシティブな内容ではあったが、私たちは先日、充分にお互い話し合ってはいたので。

会わずに伝えてもわかってくれるだろうと思い、タカをくくってLINEを送ってみた。

ワキが甘かった。

返事が来た。

激怒していた。

私はすぐに謝った。

もう遅い。

東京行きの高速バスが出る。

揺れる車内の中、私は軽率にLINEをしたことを後悔した。

まんじりともせずに夜が明けた。

午前七時、東京駅。

八重洲口のバスターミナルに着いた。

二年ぶりの東京。

久しぶりだった。

丸の内から和田倉門を抜けて 皇居へ出た。

内堀通りで朝の空気を吸うと、少し気分がやわらいだ。

そこからミッドタウンまで歩く。

彼女がよく行く、六本木ヒルズの地下のカフェに着いた。

私は、いつものようにアメリカーノを頼んだ。

昨日から今朝まで、ずっとLINEを繰り返しているが返事が来ない。

嫌な予感がした。

やり切れないもどかしさを募らせながら、六本木ヒルズへ着いた。

どうにもならない気分がたれ込める中。

彼女がいつもお気に入りだと話していた、森美術館へと上るエスカレーターに乗った。

ここまで来たら祈るしかない。

館内で韓国人アーティストの作品を鑑賞したあとに。

ミッドタウン・ガーデンを横切って、近くにある21-21 DEGHINE SIGHTと呼ばれる美術館へハシゴをした。

その間も、後悔が螺旋階段(らせんかいだん)のように渦を巻く。

作品を見て回ってはいるが、心からアートを味わう余裕がない。

駆け足で都内を走り抜けながら、折りにふれ彼女に連絡を取ってみても、まったく返事が無かった。

やり切れなさを奥歯で嚙み殺しながら、その後もLINEでひたすら謝りつづけた一週間後。

とうとうしびれを切らした私は。

「家まで行く」と、彼女の留守電にメッセージを入れると、ようやく彼女からLINEに返事がきた。

怒りに満ちていた。

愛が憎しみに変わり。

信頼が嫌悪に変わっていた。

私は、取り返しのつかない事をしてしまったことにようやく気がついた。

掴(つか)みかけてたものが、はらりと手の平からこぼれ落ちた。

どうしようもない思いとやり場のない歯痒さの中で。

後悔と未練でさいなみつづける日々をどれほど繰り返せばいいのだろう。

スマホを握りしめながら、ひとり立ち尽くすしかなかった。

【終】

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この記事を書いた人

村上 孝徳

門認定アドバイザー 有限会社 鳥彰勤務
24歳で実家である鶏肉店を継ぐために帰省。
その後、2度の離婚を繰り返し、何度か女性とおつき合いを繰り返したが、すべて上手くいかなかった。
摂食障害になり、今後の生き方を見直そうと決意する。
パートナーシップについて向き合ううちに、女性心理について探求していく中で、古来中国の叡智である「門(もん)」に出会う。
その後も心について学ぶ中で、満たされている自分を実感。
現在は、鶏肉店を経営しながら、門認定アドバイザーとして活躍中。
生き辛さを抱えたお母さんの気持ちに寄り添い、ホッとする安心感と自分軸を取り戻すヒントをお伝えしています。

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