彼女に斬られた日

数えきれないほど、振られてきた

それでも、今も思い出すのは——
エミ(仮名)に振られた、あの日のことだ。


気立てのいい女性だった。
2年間、一緒に過ごした。

「女に金を出させるのは男の恥」
そんな信念を持つ私の誕生日に、彼女はステーキハウスで祝ってくれた。

平日の昼間。
満席の店内に、客は私以外はすべて女性。

世の男たちがセルフのうどんをすすっている時間に、 私は“別の世界”を見ていた。

エミは、分かっている女だった。
踏み越えてはいけない一線を、ちゃんと守れる人だった。

それでも——別れは来る。


きっかけは、たった一枚のETCの領収書だった

本来、行くはずのない場所の記録。
疑いが現実になるのに、時間はかからなかった。

彼女の夫は、不動産会社のオーナー。
翌日には、興信所が動いていた。

エミはきっと、その瞬間に悟ったんだと思う。

「ここで終わりにしないといけない」と。

静かに目を閉じるように。
過去ごと、私ごと——すべてを手放すように。


そのとき、私の携帯が鳴った

エミからのメールだった。

何気なく開いた、その一文で
世界が止まった。

あまりにも、鋭くて。 あまりにも、迷いがない。
行間に、女の覚悟が見えた。

私は耐えようとした。 が、無理だった。

心が、真っ二つに裂ける音がした。

「待ってくれ、エミ——!」

声にならない叫びが、喉の奥で潰れた。
体は、動かなかった。

そのとき初めて気づいた。
自分がすでに、完全に斬られていたことに。

ああ——これが、くぐってきた修羅場の差、か。

そう思った瞬間、 私はその場に崩れ落ちた。


無意識を言葉でつむぐ男ごころ翻訳家 サガールのひとこと

恋愛は、優しさだけでは続かない。

覚悟と、過去と、積み上げてきた選択が—— 音もなく、すべてを決めていく。

だからこそ。
本気で誰かを愛するということは、 こんなにも怖い。

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